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TN挿絵日記ライターJin Tonicの備忘録です。

新聞小説挿絵模写日記

挿絵日記 朝刊小説 きずもの 313〜320

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幼なじみの猛と貢は、ようやく互いへの率直な思いを言葉にする。猛は自分を「ヒーロー」と呼ぶ貢に照れながらも、その関係の温かさを受け入れ、貢もまた猛の存在に深い安堵を覚えていた。しかし貢の内面には、まだ伝えていない決意があった。二人の関係や自身の過去を小説として書き始めているという事実である。

貢は猛の自分への憧れにどこか懐疑的でありながらも、その単純さや移ろいやすさを愛していた。一方で猛は、過去や加害性に悩むことなく、その時々の感情に忠実に生きる人物として描かれる。かつて家に火をつけた行為も、何かを壊したい衝動というより、言いようのない寂しさや恐れを燃やしたい衝動の表れだった。貢自身もかつて同じような感覚を抱いており、人が変わっていくことの切なさを強く意識する。

やがて貢は、自らの人生や醜さ、欲望を徹底的に見つめる小説を書き始める。それは事実ではなくとも「事実以上に本当のこと」を描く試みだった。がんの告知を受けたことで、彼は死を意識し、自分の人生を記録することに強い意味を見出す。言葉に傷つき、言葉から逃げていた過去を経て、再び言葉に向き合う中で、「モテたかった」というあまりに単純で切実な欲望にたどり着く。それは自分の凡庸さ、人間の普遍的な弱さを突きつけるものだった。

さらに貢は、成功後に力の使い方を誤り、女性を求め続けた過去や、その結果として関わった女性を傷つけた出来事にも向き合う。彼女は世間から激しい非難にさらされ、貢はその状況から逃げた自分を強く恥じる。それでも彼は、せめて自分だけは自分を理解し、許したいと願うようになる。

そんな貢を支え続けたのが妻・頼子だった。事件後も一切態度を変えず、淡々と寄り添い続ける彼女の存在は、貢にとって圧倒的であり、同時に直視できないほどの重みを持っていた。その無条件のような在り方は、救いであると同時に不気味さすら感じさせる。

一方で第三者の視点から見た頼子は、いわゆる「ナチュラル志向」の女性として映る。外見や装いに無頓着で、社会的な「どう見られるか」という価値観から距離を置いているように見える彼女は、美咲にとって理解しがたい存在だった。自らを努力で保っている美咲にとって、頼子の自然体はむしろ異質であり、不気味でさえあった。

こうして物語は、変化と不変、凡庸さと欲望、そして他者との関係の中で揺れる人間の姿を、多層的に描き出していく。


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挿絵日記 朝刊小説 きずもの 305〜312

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万千花は高熱で倒れ、遙にタクシーで救急外来へ連れて行かれる。だがバンクーバーの医療体制は深刻な医師不足により機能不全気味で、救急外来には多くの患者があふれていた。万千花は40度の熱を出しながらもベンチでうずくまり、結局医師に診てもらえるまで8時間も待たされる。診断は異常なしで、鎮痛剤のアドビルを飲めと言われただけだった。帰りの車中、遙は空腹と疲労で限界だったが、万千花を放って帰ることはなかった。

遙は万千花に腹を立てながらも、全力で看病する。その背景には二人の長い友情がある。子どもの頃、遙がいじめられた時には万千花が相手に仕返しをし、思春期にはタンポンを怖がる遙を無理やり克服させた。さらに遙が薬物の影響で乱暴され傷ついた際には、加害者たちを探し出して報復させるほどだった。東京で同居していた頃、遙が胃腸炎で弱った時にも、万千花は乱暴な言葉を吐きながらも世話をしていた。そんな強い万千花が今、遙の膝の上で弱々しく謝る姿に、遙は怒りと恐れを覚える。親しい友人が弱る姿を見ることは、耐えがたいほど怖いものだと気づくのだった。

一方で物語は、幼なじみの猛と貢の再会へと移る。猛は肥満や体調不良に悩みながらも、久しぶりに再会した貢から「がん」を告げられ、衝撃で号泣してしまう。二人は思い出の瀬名浜を訪れ、誰もいない海辺で語り合う。猛は子どものように「死なないよな」と泣きすがり、貢は静かにそれを受け止める。東京に戻れば抗がん剤治療が始まるが、どれほど効果があるかは分からないという。

夕方まで浜辺で過ごすうち、二人は子どもの頃の思い出を語る。猛は運動万能で人気者だったが勉強は苦手で、貢はその猛をずっと羨ましく思っていたと打ち明ける。対して猛は、自分には誰にも言えない秘密があると告白する。ある夜、理由も分からないまま自宅に火をつけようとしたのだ。すぐ消したため大事には至らなかったが、その焦げ跡を見るたび罪悪感に苛まれてきた。

貢はそれを責めず、「家族を殺したかったのではなく、燃やしたかったんだね」と静かに受け止める。猛は、自分は幸せで恵まれているはずなのに、時折どうしようもない孤独に襲われると打ち明ける。貢は「人生は寂しいものだ」と穏やかに言う。

さらに話は貢自身の過去にも及ぶ。彼は文学賞を受賞するほどの作家だったが、逮捕事件によって名声を失った人物でもあった。しかし故郷の人々は彼を責めるどころか温かく迎えてくれたという。猛は彼を村の誇りであり英雄だと励ますが、自分の人生はうまくいかなかったと自嘲し、家庭の問題や自分の弱さを吐露する。


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挿絵日記 朝刊小説 きずもの 297〜304

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万千花は体調不良のまま飲食店での仕事を続け、若い同僚ミツキの「優しさ」と、店長や周囲の無理解の狭間で耐え抜こうとする。永住権取得のため「責任感ある人間」と評価されたい思いから無理を重ね、嘔吐を繰り返しながら終業まで働き切るが、帰宅途中で倒れてしまう。夜道で目覚めた万千花は頭を強く打ったことに気づきつつも、「大丈夫」と自分に言い聞かせ帰宅を試みる。道中で飼い猫ミッテに出会い、かつての仲間や人生観に思いを巡らせるが、家に着いても力尽き玄関で気絶する。遙を呼ぶ声は届かず、弱った姿を見せたくない思いと孤独が重なる。

一方の遙は、バンクーバーでの生活を「人生の休暇」と位置づけ、日本へ帰る意志を保っている。街の明るさや健康的な暮らしに救われつつも、かつて鬱に苦しんだ記憶を忘れていない。そんな中、万千花が自分の過去や失敗をキキやゾーイに語り、「日本は遅れている」「日本社会の被害者だ」と誇張して見せたことに強い怒りを覚える。自分の物語を他人に売り、在留理由の正当化に使った万千花を「ルール違反」と感じ、制裁を加える決意で部屋を飛び出す。

しかし廊下で遙が目にしたのは、すでに衰弱しきった万千花の姿だった。万千花は高熱と嘔吐で意識がもうろうとしながらも、仕事に行こうとする。救急車を拒み、医療費を気にする姿に遙は戸惑いと怒りを覚えつつ、ベッドへ運び、氷で冷やし、体温を測ると39度を超えていた。夜には40度近くまで上がり、遙は911に電話するがつながらず、結局Uberで救急外来へ向かうことになる。陽気に話しかけてくる運転手の無神経さに、遙は現実の過酷さを痛感する。二人の間にある怒りと依存、友情と歪みは、万千花の重い病状によって一時的に押し流され、遙は命の危機に直面した友を前に、感情よりも行動を選ばざるを得なくなる。


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挿絵日記 朝刊小説 きずもの 289〜296

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故郷に戻った貢は、幼馴染の猛と再会し、変わらぬ距離感に安堵と複雑さを覚える。猛は太って所帯持ちになり、上司に頭を下げる立場となったが、貢を「幼馴染のみっちゃん」として変わらず扱う。その粗い解像度のまなざしに、貢は救われもすれば、取り残された思いも抱く。猛の家では一家総出の歓迎を受け、同級生の美咲や娘たちとも再会する。かつて自分が送った本や贈り物が大切にされていたことを知り、貢はこの土地で今も「作家」として記憶されていることを実感する。

集落の人々も貢を温かく迎える。店では握手を求められ、施設ではサインを頼まれ、野菜や米まで届けられる。だがその裏で、彼は自分の犯罪が忘れ去られたかのような錯覚と、決して消えない現実の記憶との間で揺れる。集落の「穴のような愛情」は、問題を抱えた者をも包み込み、黙って受け入れる力を持っていた。その象徴が、かつて厄介者だった芸術家マーやんと「爆撃美術館」の逸話である。集落は彼を見捨てず、死後も作品を残し、墓を守り続けていた。玄関に置かれた三体の人形「マーマーマー」は、不格好で不気味ながらも、吐き出す口を持つ存在として貢の心に残る。

一方、カナダでは万千花が友人たちと暮らしながら永住権取得を目指して働いている。二日酔いで吐く遥を、キキとゾーイは真っ先に気遣い、ソファが汚れることも厭わない。その姿に万千花は感動し、自分もそんな「余裕ある人間」になりたいと願う。だが現実は厳しく、彼女自身も体調を崩しながら仕事を続け、職場では人手不足のため誰も本気で止めてくれない。優しさは余裕があってこそ生まれるのだと、万千花は身をもって知る。

帰郷した貢を包む集落の無言の愛情と、異国で必死に生きる万千花の孤独と焦り。二つの場面は、人が人を受け入れる形と、その難しさを対照的に浮かび上がらせている。


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挿絵日記 朝刊小説 きずもの 281〜288

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聖愛は、挑発的で自作自演のパフォーマンスを行うアイドルグループ「GP」に強く惹かれ、文化祭でその楽曲のセンターを務めることになる。しかし恋人・紡は、露出の多い衣装と性的に見える振り付けに強い嫌悪感を抱き、聖愛が人前で踊ることを許さない。聖愛は彼の愛情と束縛の間で揺れ、結局ダンスを辞退し、文化祭にも行かず家に閉じこもる。GPの動画を一人で見ることは「裏切り」のように感じられ、自由に自己表現する彼女たちに憧れと苦しさを同時に抱く。

ある日、姉の乃愛にGP好きが知られ、二人で歌詞の意味を知る。
「私たちが欲しいのは、私たち自身だ」というメッセージは、聖愛の心を強く揺さぶり、彼女は涙を流す。事情を聞いた乃愛は、金属バットを手に紡を呼び出し、「妹を物のように扱うな」と激しく説教する。紡は聖愛を本気で愛していたが、支配的な価値観を崩せず、二人は別れることになる。失恋に深く傷つきながらも、聖愛は同時に大きな解放感を覚える。

その後、姉妹は一緒にGPを見るようになり、語り合う時間が増える。乃愛は過激な怒りを向けていた作家や事件についても、「あの人も人間なんじゃよ」と受け止め直す姿勢を身につけ、聖愛もそれに影響される。人を偶像や敵としてではなく「人間」として見る視点を得たことで、二人は精神的に強くなる。

乃愛は英語学習に打ち込み、カナダ留学を決意する。束縛から解放された聖愛も勉強に前向きになり、特に英語と数学で成績を伸ばす。GPの名が「輝く相棒」を意味する造語だと知り、聖愛にとっての本当の「GP」は、いつもそばにいた姉・乃愛だと気づく。

一方、作家の貢は帰郷し、幼なじみの猛と再会する。かつては届かぬ存在だった町田美咲と猛の結婚を思い出しつつ、自分も愛によって結婚できた過去を振り返る。太った猛に迎えられ、少年時代の記憶と現在が重なり合う中、貢は地元に戻った実感を噛みしめる。


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