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TN挿絵日記ライターJin Tonicの備忘録です。

新聞小説挿絵模写日記

挿絵日記 朝刊小説 きずもの 353〜360

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物語は、貢の葬儀後の余韻と、それぞれの人物が抱える喪失や変化を軸に進んでいく。頼子のそばには、場違いにも見える若者二人と中年女性が寄り添っていたが、彼らは頼子を守るように立ち振る舞い、周囲に誤解を与えるほど自然にその場に溶け込んでいた。猛と美咲は幼なじみとして声をかけるが、言葉にならない感情に押し流され、ただ「帰ってきてほしい」と願うことしかできない。それでも頼子は穏やかに応じ、彼らと新たな関係を築いていく。貢の遺書によって残された家は維持され、頼子はそこを訪れながら、親友の善恵や若者たちと静かに日常をつないでいく。美咲とは山に登るようになり、悲しみを共有しつつも、前に進む時間が流れ始めていた。

一方、万千花の物語は、カナダから帰国した現在と過去の記憶が交錯する形で描かれる。実家での生活は、祖母や曽祖母の不在による空虚さと、母・一子のたくましさが際立つものだった。質素な朝食や日本の蒸し暑い夏の空気は、彼女に強烈な実感をもたらし、かつての自分との距離を意識させる。幼なじみの遙との関係もまた、その「変化」を象徴していた。万千花は人は変わるものだと受け入れているが、遙はそれを恐れ、二人の間には深い亀裂が生まれる。誠実に言葉を尽くしても埋まらない溝は、やがて沈黙と距離へと変わっていった。

カナダでの万千花の生活もまた過酷だった。体調を整えながら働き口を見つけるが、低賃金や不当な扱いに苦しみ、それでも将来の永住権取得という目標を捨てず、歯を食いしばって生きていた。キキやゾーイの支えはあったが、現実の厳しさと孤独は消えない。それでも彼女は努力を続け、希望をつなごうとする。

やがて物語は、万千花と遙の再会へと向かう。ビーチで偶然出会った二人は、言葉を交わす代わりに、かつて共有していた身体感覚――片足でぶつかり合う遊びの延長のような勝負――で向き合う。それは単なる遊びを超えた、感情のぶつかり合いだった。互いに全力でぶつかり、息を切らしながらも立ち続ける姿は、言葉では届かない想いを体で伝えようとするかのようである。周囲の人々も次第にその熱に巻き込まれ、応援へと変わっていくが、勝負は決着を見ないまま終わる。友人たちが介入し、ようやく二人は引き離される。

この一連の出来事は、喪失の痛みを抱えながらも新たな関係を築こうとする人々と、変化を受け入れようともがく者たちの姿を対照的に描き出している。言葉では埋められない距離や、それでもなお繋がろうとする意志が、静かに、そして力強く浮かび上がる展開である。


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挿絵日記 朝刊小説 きずもの 345〜352

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物語は、温泉での一風変わった対話から始まる。頼子は、自身の体に残る傷をきっかけに「人は変わり続ける存在でありながら、変わらないものにも囚われる」という感覚を語る。その流れで、若い肉体を見て自分の感覚を確かめたかったと明かすが、そこに欲情はなく、ただ純粋な楽しさがあるだけだったという。夫・貢が若い女性に欲情する理由が理解できないと語る彼女の姿は、性や関係性に対する価値観の違いを際立たせる。

議論はやがて、加齢と性欲、そして社会の価値観へと広がる。雷人は「男性は衰えとともに、自分の価値を確かめるために若さへ向かうのではないか」と語り、バイアグラなどの存在が象徴する社会の構造にも言及する。一方で善恵は、貢の不倫や権力を利用した関係を強く問題視し、頼子の寛容さに疑問をぶつける。しかし頼子は「裏切られたとは思っていない」と静かに受け止めており、その姿勢が周囲に複雑な感情を呼び起こす。

やがて話題はネット上の評価へと移り、貢に対する世間の批判や噂が語られる。だが、情報の真偽は曖昧であり、「被害」と「加害」の境界の曖昧さが浮き彫りになる。さらに風俗やパパ活など、性と社会の問題について議論は白熱し、4人は極めて率直な意見を交わす。その後、ベッドに横たわりながら互いの身体を眺める時間は、性的な意味を超えた奇妙な解放感に満ちていた。身体は意味を失い、ただ「存在」として並ぶ――そんな感覚が彼らを包み込む。

場面は変わり、猛の日常へ。彼は亡き親友・貢の影響もあり、健康的な生活へと踏み出していた。運動や食事改善によって体だけでなく心も変化し、生きる実感を取り戻していく。そんな中、貢が膵臓がんであることをSNSで公表し、世間の反応が一変する。かつて批判していた人々も、死を前にすると彼を擁護し始める様子に、猛は人間の身勝手さを感じる。

しかし治療は奏功し、貢は奇跡的に回復する。故郷では温かく迎えられ、穏やかな時間を過ごすが、再び作品を発表すると状況は一変する。過去の騒動と結びつけられた作品は炎上し、彼は再び激しい誹謗中傷にさらされる。「死ぬと思っていたのに生きている」ことすら非難の対象となる理不尽さが描かれる。

それでも創作を続けた貢は、やがて何気ないエッセーを最後に世を去る。死因は病ではなく、地下鉄での突発的な暴力だった。生と死、赦しと非難、身体と欲望――さまざまなテーマが交錯する中で、人間の不確かさと社会の残酷さが静かに浮かび上がる展開となっている。


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宿老

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来月の5月16日で、毎日、挿絵を模写した『きずもの』が終わるんだね。
次の新聞連載小説は馳星周の『宿老』で挿絵は森豊だって、知らんな。
どんな作風か興味があり、ネットで調べると時代物と言うか侍物がメインらしい。
う〜ん、おいらの挿絵模写日記にはムズそうで、どうするべ?


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挿絵日記 朝刊小説 きずもの 337〜344

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337〜344回では、万千花と遥の激しい対立を軸に、「変わること」と「変わらないこと」の価値が鋭くぶつかり合う。万千花は、自らの過去や家族の歴史、そして女性として生きる中で受けてきた抑圧や苦しさを語り、「正しくあろうとする変化」を選んだ理由を明かす。一方の遥は、かつて共有していた荒々しくも自由な言葉や生き方が失われたことに強い違和感と怒りを抱き、万千花の“正しさ”に距離を感じる。友情のかたちが揺らぐ中で、「本当の友達とは何か」という問いが浮かび上がる。

場面は変わり、善恵の視点では、時代とともに変化してきた「女の友情像」が語られる。理想化やステレオタイプを経て、ようやく不完全で生々しい関係が描かれるようになった中で、善恵は自らの親友・頼子との関係を振り返る。恋人を共有した過去すら抱えながら続いてきた二人の絆は、既存の言葉では定義できない特別なものとして再確認される。

さらに、頼子と過ごす現在の時間の中で、二人はかつての恋人の痕跡が残る部屋に眠り、さらには若い男性従業員と共に風呂に入るという奇妙で親密な体験を共有する。年齢を重ね、変化していく自分の身体を語る頼子の姿には、不思議な明るさがあり、老いや衰えすらも受け入れながら生きる強さがにじむ。過去も現在も矛盾を抱えたまま、それでも続いていく関係のかたちが、多層的に描かれる章となっている。


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挿絵日記 朝刊小説 きずもの 329〜336

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329〜336では、物語の中心が「許し」と「回復」、そして「生き方の衝突」へと大きく展開していく。

まず、美咲と頼子の対話では、夫・貢の不貞に対する価値観の違いが浮き彫りになる。頼子は、夫の裏切りを“女性として許すべきでない問題”と捉えるのではなく、あくまで「自分個人の問題」として受け止めている。親友・善恵のように倫理や社会的正しさで裁くのではなく、自分が怒れない以上、離婚もしないという姿勢を自然体で貫く。その「これでいい」という言葉は、諦めでも強がりでもなく、彼女自身の選択としての静かな強さを示していた。一方の美咲は、その在り方に戸惑いながらも、自分との違いを強く意識する。

並行して、遙と万千花の物語は、より切迫した局面に入る。体調を崩した万千花は回復後も衰弱し、無理に仕事へ戻ろうとするが、遙はそれを強く止める。かつて涙を見せなかった万千花が、些細なことで泣くようになり、眠れないなど精神的な不調を抱えていることが明らかになる。遙は自身の引きこもり経験を重ね合わせ、これは専門的な治療が必要だと判断するが、医療へのアクセスの困難さや本人の気力の低下が障壁となる。

異国の地で孤立しながらも、遙はキキやゾーイの助けを借りて奔走する。早朝からクリニックに並び、ようやく精神科医の診察へとつなげることに成功する。治療によって万千花は徐々に回復し、眠れるようになり、食欲も戻っていく。回復の兆しは確かだったが、同時に彼女は再び働こうとし始める。

ここで二人の価値観は激しく衝突する。遙は「命を削るような働き方」をやめるよう迫るが、万千花は将来への不安や金銭的理由から働く必要性を訴える。そのやり取りの中で、万千花の話し方や思考が、キキやゾーイの影響を受けて変化していることに遙は気づき、強い違和感と怒りを抱く。かつての“自分たちのやり方”を失い、他者に同化しようとする万千花に対し、遙は「本来の彼女」を取り戻させようと、あえて挑発的にぶつかっていく。

万千花もまた内心では揺れており、遙の指摘に反発しながらも、自分が変わってしまったことを自覚している様子がうかがえる。二人の衝突は、単なる口論ではなく、「どう生きるか」「何を守るか」という根本的な問いをぶつけ合うものとなっていく。

この一連の流れは、他者を理解しようとする優しさと、自分を守るための変化、そしてそれを拒もうとする絆の葛藤を描き出している。頼子の静かな受容と、遙の激しい抵抗という対照的な姿を通じて、「人はどこまで他者を許し、どこまで自分を変えるべきか」というテーマが深く掘り下げられている。


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