
北海道新聞の月刊の北海道マラソン連載小説 レジェンド編がスタート。
第3話「ロング・ウェイ・ホーム」の前編、80歳のレジェンドが登場だって。
8/28に掲載された主人公・山路充のお話の挿絵模写とあらすじなんぞ。
主人公の名前の呼び方が気になる、「やまじみつる」でいいの?
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大会前日、80歳の山路充は、いつもと変わらないトレーニングを淡々とこなしていた。バーベルを使った筋トレも、ランニングも、ストレッチも、特別なことはしない。大会前だからといって練習量を増やしたり、逆に休みすぎたりするのではなく、「いつもの運動を、いつもと同じに」。それが、長年走り続けてきた充の流儀だった。
翌日に控えているのは、38回目の北海道マラソン。新型コロナなどによる中止を除き、開催された大会にはすべて出場し、すべて完走してきた。まさに「レジェンドランナー」である。
充が初めて北海道マラソンを走ったのは1987年。地方公務員として働きながらジョギングを楽しんでいた充は、札幌で初めて開催されるフルマラソンに挑戦した。当時は制限時間4時間、参加者も400人に満たない、本格派ランナー向けの厳しい大会だった。
暑さとの戦い、日々のトレーニング、栄養管理、そして自分の体の変化を感じ取る力。充はそこにマラソンの難しさと面白さを見いだし、北海道マラソンを一年の中心に据えるようになる。
多くのランナーと顔見知りになっても、充はどこかのランニングクラブに所属することはなかった。大会でスタートラインに立てば、結局は一人で走る。信じられるのは、自分の体と、自分が積み重ねてきた練習だけ。その孤独こそが、充にとってマラソンの魅力でもあった。
そんな充を支えてきたのが妻の涼子だ。元管理栄養士の涼子は、前日の夕食にもご飯、味噌汁、鮭、鶏ささみ、野菜や果物など、消化と栄養のバランスを考えた食事を用意する。そして、マラソンについての注文はただ一つ。
「ケガだけはしないようにね」
充はその言葉を胸に、毎回スタートラインへ向かう。
そして38回目の北海道マラソン当日。気温は24度、最高気温は32度の予報。長年の経験から暑さへの備えをしてきた充にとって、これも「通常通り」の条件だった。
ところがスタート前、充は一人の若いランナーの異様な様子に気づく。鍛え抜かれた体、最新の装備。見るからに速そうなのに、緊張で顔をこわばらせ、ぶつぶつと何かを呟いている。
心配した充が声をかけると、青年は「体調が悪いわけではない」と必死に説明する。北海道マラソンにずっと憧れていて、本州から初めて遠征してきたのだという。月300キロ走り、食事もしっかり取り、ホテルでは9時間眠った。それでも、初めての大舞台に緊張しているのだった。
充は青年を励まし、「気楽に、楽しんで走るといい」と声をかける。
そして青年から「北海道マラソンは何回目ですか?」と尋ねられ、充は指で「3」と「8」を示す。
「まだ、三十八回目だよ」
その瞬間、周囲のランナーたちが一斉に充を振り返る。
ここから始まるのは、単なる一人の老人のマラソン記録ではない。長く走り続けることでしか得られない経験、体との対話、家族の支え、そして世代を超えて受け継がれていく「走ることの楽しさ」が描かれていく物語だ。
速く走ることだけが、マラソンではない。
80歳になってもスタートラインに立つ充の姿には、シニア世代が人生を楽しみながら「まだ自分は走れる」と思える、静かな力強さがある。
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