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幼なじみの猛と貢は、ようやく互いへの率直な思いを言葉にする。猛は自分を「ヒーロー」と呼ぶ貢に照れながらも、その関係の温かさを受け入れ、貢もまた猛の存在に深い安堵を覚えていた。しかし貢の内面には、まだ伝えていない決意があった。二人の関係や自身の過去を小説として書き始めているという事実である。

貢は猛の自分への憧れにどこか懐疑的でありながらも、その単純さや移ろいやすさを愛していた。一方で猛は、過去や加害性に悩むことなく、その時々の感情に忠実に生きる人物として描かれる。かつて家に火をつけた行為も、何かを壊したい衝動というより、言いようのない寂しさや恐れを燃やしたい衝動の表れだった。貢自身もかつて同じような感覚を抱いており、人が変わっていくことの切なさを強く意識する。

やがて貢は、自らの人生や醜さ、欲望を徹底的に見つめる小説を書き始める。それは事実ではなくとも「事実以上に本当のこと」を描く試みだった。がんの告知を受けたことで、彼は死を意識し、自分の人生を記録することに強い意味を見出す。言葉に傷つき、言葉から逃げていた過去を経て、再び言葉に向き合う中で、「モテたかった」というあまりに単純で切実な欲望にたどり着く。それは自分の凡庸さ、人間の普遍的な弱さを突きつけるものだった。

さらに貢は、成功後に力の使い方を誤り、女性を求め続けた過去や、その結果として関わった女性を傷つけた出来事にも向き合う。彼女は世間から激しい非難にさらされ、貢はその状況から逃げた自分を強く恥じる。それでも彼は、せめて自分だけは自分を理解し、許したいと願うようになる。

そんな貢を支え続けたのが妻・頼子だった。事件後も一切態度を変えず、淡々と寄り添い続ける彼女の存在は、貢にとって圧倒的であり、同時に直視できないほどの重みを持っていた。その無条件のような在り方は、救いであると同時に不気味さすら感じさせる。

一方で第三者の視点から見た頼子は、いわゆる「ナチュラル志向」の女性として映る。外見や装いに無頓着で、社会的な「どう見られるか」という価値観から距離を置いているように見える彼女は、美咲にとって理解しがたい存在だった。自らを努力で保っている美咲にとって、頼子の自然体はむしろ異質であり、不気味でさえあった。

こうして物語は、変化と不変、凡庸さと欲望、そして他者との関係の中で揺れる人間の姿を、多層的に描き出していく。


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