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故郷に戻った貢は、幼馴染の猛と再会し、変わらぬ距離感に安堵と複雑さを覚える。猛は太って所帯持ちになり、上司に頭を下げる立場となったが、貢を「幼馴染のみっちゃん」として変わらず扱う。その粗い解像度のまなざしに、貢は救われもすれば、取り残された思いも抱く。猛の家では一家総出の歓迎を受け、同級生の美咲や娘たちとも再会する。かつて自分が送った本や贈り物が大切にされていたことを知り、貢はこの土地で今も「作家」として記憶されていることを実感する。

集落の人々も貢を温かく迎える。店では握手を求められ、施設ではサインを頼まれ、野菜や米まで届けられる。だがその裏で、彼は自分の犯罪が忘れ去られたかのような錯覚と、決して消えない現実の記憶との間で揺れる。集落の「穴のような愛情」は、問題を抱えた者をも包み込み、黙って受け入れる力を持っていた。その象徴が、かつて厄介者だった芸術家マーやんと「爆撃美術館」の逸話である。集落は彼を見捨てず、死後も作品を残し、墓を守り続けていた。玄関に置かれた三体の人形「マーマーマー」は、不格好で不気味ながらも、吐き出す口を持つ存在として貢の心に残る。

一方、カナダでは万千花が友人たちと暮らしながら永住権取得を目指して働いている。二日酔いで吐く遥を、キキとゾーイは真っ先に気遣い、ソファが汚れることも厭わない。その姿に万千花は感動し、自分もそんな「余裕ある人間」になりたいと願う。だが現実は厳しく、彼女自身も体調を崩しながら仕事を続け、職場では人手不足のため誰も本気で止めてくれない。優しさは余裕があってこそ生まれるのだと、万千花は身をもって知る。

帰郷した貢を包む集落の無言の愛情と、異国で必死に生きる万千花の孤独と焦り。二つの場面は、人が人を受け入れる形と、その難しさを対照的に浮かび上がらせている。


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