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万千花は、英語を話す自分と日本語を話す自分がまるで別人であることを自覚している。英語では語彙の制約から慎重で、表情や身振りを多用し、はっきりと意思を伝える。一方、日本語の自分は無表情で早口だ。そんな中でも、親友の遙は日本語でも英語でも話し方が変わらず、日本語訛りの英語でありながら自然に人とつながっていく。カナダ人のケイティーともすぐに親しくなり、その姿を万千花は誇らしく思う一方、胸の奥に小さな痛みを覚える。

遙は周囲から愛される存在だ。キキやゾーイも彼女を面白がり、「シスターフッド」という言葉で二人の関係を祝福する。しかし遙自身は、その関係を「万千花がボスだった」と軽く表現する。万千花は中学生時代、遙を独占し、他の友人関係を遠ざけていた自分を思い出し、後悔と羞恥に苛まれる。友情とは所有ではなく尊重であるはずだと、ようやく理解し始める。

万千花は贖罪のように、遙の魅力を周囲に語り、彼女が新しい友人たちと楽しげに過ごす姿を肯定しようと努める。しかし同時に、彼女自身は移民永住権(PR)取得のため、限界まで自分を追い込んでいた。激しい生理痛や頭痛、慢性的な疲労に悩まされ、鎮痛剤やカフェインに頼りながら、ダブルワークと語学学校を続けている。語学力は伸び悩み、出会い系アプリにも手を出すが、結婚によるPR取得を考える自分に嫌悪を覚える。結婚に夢を持てないのは、これまで見てきた不平等な結婚生活の記憶があるからだ。

一方の遙は、PRを目指さず、働きもせず、観光ビザのままバンクーバーで気ままに暮らしている。その姿に万千花は苛立ちを覚えつつも、友情の名の下に感情を抑え込む。遙から見た万千花は、かつての輝きを失い、痩せ細り、まるで病人のようだ。遙は二人で気兼ねなく外食し、無意味な会話を楽しむ時間を取り戻したいと願うが、それを叶えてくれるのは今やケイティーだった。

遙とケイティーは高級レストランを巡り、出会い系アプリの話や過去を軽やかに共有する。遙は、自身が過去に日本で起こした事件についても、重くならない形で語れる距離感に安堵する。理解されない痛みを抱えたまま、それでも今を生きる二人の姿が、万千花との静かな断絶を際立たせていく。


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