
善恵は、自分と元恋人・貢が共有していた過酷な青春時代を思い返していた。80〜90年代の閉塞した空気の中で、二人は互いを慰め合い、深い関係になる。貢は見た目こそ冴えなかったが、知性と繊細さを持つ青年で、善恵に対しては驚くほど誠実だった。ただし彼はあまりに正直で、自分の欲求に悩む姿を見せることもあり、その繊細さこそが善恵には気がかりでもあった。
やがて貢に手酷く裏切られたが、善恵は彼を憎めず、むしろ彼が頼子という優れた女性を射止めたことに感心すらした。善恵自身も別の男性と付き合ったが、結局は自分と似た「地味で努力型」の男性ばかりを選んでいた。だが年齢を重ねるにつれ、青春時代には冴えなかった「ガリ勉」たちが社会で評価される一方、かつて輝いていた運動部やヤンキーの男子たちは輝きを失っていくという“逆転現象”を目の当たりにし、世界の不公平さを感じ始める。
善恵は成功した起業家となり、経済的には余裕がある。しかし女性の場合、年齢や外見に偏った価値観は依然強く、男性のように「成功=モテ」に結びつかない現実に虚しさを覚える。ホストや若いセラピストから寄せられる好意は、あくまで金を見てのものだと分かっており、自尊心の置き場を失っていた。
そんな中、元恋人の貢は小説家として成功していたが、のちに事件を起こして社会的に失墜し、それが頼子に迷惑をかけている。善恵は親友として頼子を気遣うが、頼子本人は驚くほど平静で、むしろ以前と変わらない調子で善恵に連絡をくれる。
ある朝、頼子からのLINEのやりとりの直後に電話がかかってきて、善恵は久々に声を聞き、嬉しさと戸惑いを感じる。頼子は善恵を自宅へ誘い、善恵は貢の状態を気にしつつも、頼子の「大丈夫」という言葉に従い、訪問を決める。自分は何も悪いことはしていないはずだ——そう思いながらも、心には複雑な感情が渦巻いていた。
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