IMG_5362





聖愛は「初めて」を迎えるために極端な肉体改造へ踏み込み、食事制限とダイエット器具で体を追い込み、体重や肌色、乳首の色まで「新品」であろうと執着する。理想から外れた自身を許せず、紡に捧げるために完璧を求めながらも、その瞬間が来てほしい気持ちと来てほしくない恐怖が胸の中で揺れていた。一方、季節が変わり、長く続いた雨が上がると万千花は「生き延びた」と思う。渡航後しばらくは天候への不調を感じなかったが、カナダ生活に慣れ心身が落ち着いた頃、激しい生理痛や頭痛に襲われるようになる。天気の悪化と連動する痛みは祖母や母の訴えを思い出させ、自分も「天気に左右される人間」になっていると気づく。ビタミンDで多少は和らぐが、結局はアドビル(Extra Strength)に頼らざるを得ず、痛みに耐えながら働き続けた。
労働時間は月300時間を超え、物価高で貯金が追いつかない。PR取得のための点数は年齢・学歴で大きく不利で、語学と勤務年数で稼ぐしかない。満点に近づくため語学学校への再入学を決意するが、移民コンサルタントからは半笑いで「無理でしょう」と言われる上、最終的には「カナダ人男性と結婚すれば手っ取り早い」と屈辱的な助言まで受け、万千花は怒りと虚しさを覚える。
相談料が安いという理由で選んだことを悔やみながら、バス停でSNSを開き、より厳しい境遇の人々を探しては心の安定を保とうとする。だが他人の苦境を見ても救われず、若さによる高得点を得られる者たちに苛立ちを覚えるばかり。バスに乗ると、多様な人種の乗客たちを眺め、彼らがPR保持者なのか、生まれながらのカナダ人なのかを考える。自分は英語を聞き取れるまでになったのに、まだ「永続的にここに住む資格はない」と感じてしまう。
それぞれが移民としてこの国に辿り着いた道のりを想像しながら、万千花はまだ見えない未来に、細い可能性の糸だけを信じてすがり続けていた。


にほんブログ村 その他日記ブログ 備忘録・メモへ
にほんブログ村