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善恵は形式的なメッセージしか返せず、実際に相手を慰める力が自分にないことに葛藤していた。過去の自分なら冗談めかして重さを和らげられただろうに、と悔やむ。そんな彼女の思考は「自信のない女」たちへの想像で埋め尽くされる。場面は変わり、カナダのバンクーバーに住む万千花と遙。遙は海外の新しいブランドや雑貨を次々に買い込み、かつての自分を思い出させる存在となっていた。キツラノの街では古着文化が浸透し、持続可能性や独自性を大事にする若者が多い。それを見て万千花は、若い頃にブランド品で自分の価値を証明しようとしていた過去を恥じ、消費への執着を反省する。

遙の買い物熱は続くが、彼女の素直さや強さを万千花は愛情をもって見守る。環境や年齢を考えると苛立ちも覚えるが、自分も同じだったと口には出せない。SNSに「いいね」を求めていた過去、自分をよく見せるために外国人の友人ばかりをインスタに載せていた日々を思い出す。孤独と劣等感を抱えながらも、必死に語学と生活力を身につけた万千花は、努力の末に自立した存在になった。一方で、遙は長期の語学学校に通いながらも成長が見えず、同居が彼女の英語習得を妨げているのではと案じる。

そんな中、幼馴染と日本語で軽口を交わす心地よさに気づく。とりわけオノマトペが通じることに感動し、互いの存在が大きな支えであると実感する。日本料理店で日本人同僚と働く現実に気づきながらも、幼馴染との自然体の会話は特別だった。長年身構えて生きてきた自分にとって、遙の存在は心を解きほぐすものだった。休日も少なく生活は厳しいが、それでも隣にいる彼女との時間が、かつて失われた安らぎを取り戻させていた。


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