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作家・松川貢は、新作小説の装丁に若手写真家・金城の写真を使うことを編集者に提案され、戸惑いと反発を抱く。だが「話題性」という言葉に心が揺れ、売れたいという内なる欲望に気づかされる。彼の作品は文学界で一定の評価を得ていたが、書店では見かけられず、売れ行きも芳しくない。自信と焦燥の狭間で、密かに性行為によって現実逃避する夜もあった。

やがて金城の写真は採用され、新刊は映画化されて成功を収める。貢は一時的に注目を浴び、金城の個展にも顔を出すようになる。文壇とは異なる華やかな世界に触れつつ、彼は金城の周囲にいる若く美しい女性たちに惹かれ始める。中でも「遙」と名乗る女性と関係を持ち、身体を重ねながらも、どこか冷静に彼女を観察していた。刺青のある彼女の過去や真意に対して疑念を抱きながらも、次第に再会を楽しみにするようになっていく。

一方、文芸誌での若手作家・望月まもるとの対談が、新たな波紋を呼ぶ。対談の原稿に、望月が大幅な訂正を加えてきたのだ。謙虚な物言いが強気な批評にすり替えられ、貢の作品は「多数者目線で描かれ、信頼できない語り手という自覚もない」と明確に批判されていた。編集部に怒りをぶつけたくなる衝動を抑え、貢は冷静さを装って長文メールを書く。その内側には、尊厳を傷つけられた怒りと、変わっていく文学界への戸惑いがあった。


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