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新人作家・望月まもるとの対談後の打ち上げで、松川貢は口説くつもりだった彼女の体調不良に興ざめし、自分の浅ましさに嫌悪を覚える。45歳の貢は今も妻・頼子に隠れて浮気を繰り返しており、対談記事を読んだ町田猛は、かつての親友・貢との関係を思い返す。家族との距離を感じつつ、猛は独りの休日を激辛焼きそばとともに過ごす。

猛は記事中の貢の発言を読み返すが、洗練された文体や流動的な表現にかつての「みっちゃん」の姿を重ねることができない。中学時代までは親しく呼び合っていた二人だが、高校以降は疎遠になり、貢は猛を名前で呼ばなくなった。猛が貢の作家デビューを知ったのは、母を通してだった。驚きつつも納得し、実家を訪ねて祖母の真実から電話番号をもらい連絡を取る。久々の貢の声は、かつてより低く落ち着いており、「小説家の声」に感じられた。

二人の交流は再び始まり、携帯やスマートフォンを通じて続いていった。猛は、少年時代に共有した貢の部屋での思い出や、彼の知的な説明に感じた憧れを思い出す。だが今では貢の小説を読むたび、難解な言葉や思想がまるで焼きそばの麺のように頭に残らない。望月との対談でも、猛には彼女の批評も貢の応答も理解しきれなかった。

望月は貢の作品に対し、少数者の描き方が多数者目線であることや、その視点に自覚的でない点を批判。貢はそれに応じ、自分の描く人物は「世界を享受する側」にいて、それは「凡庸な人間の凡庸さ」であり、人間の罪の一つだと語る。猛は辛い焼きそばを食べ終え、満腹感とともに、なお理解しきれない言葉の数々を反芻する。

一方、貢は写真家・金城叶との関係や、遙という女性との出会いを回想する。金城の作品『傷』シリーズは、身体に傷を持つ人々を被写体とし、家庭内虐待を受けた本人の過去と重ねられたものだった。貢はそのテーマを陳腐と感じながらも、金城の実体験と美貌により何も言えず、自らの小説『空白』と比較していた。『空白』は、自分と同じ誕生日・経歴を持つ少女を主人公とし、死者を含む不思議な存在たちと共に生き延びる物語で、600枚にまとめられた自伝的長編だった。


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