
猛は貢の文芸誌を手に取りながら、かつて本を買うために通った「すばる屋」の記憶を辿る。店員や地元の人々は、貢の才能を知ると驚き、猛に思い出話を聞きたがった。猛は、幼い頃の貢が分厚い本を読んでいたという記憶を語るが、それは後に脚色されたもので、本当は図鑑を読んでいたのだと思い出す。
猛の中で、貢は常に本を手にしていた存在として記憶されていたが、実際の貢は人前で本を読むことを避けていた。だが、猛の中では「若い仙人」のようなイメージが定着しており、地元の同級生たちの印象とは異なっていた。貢が文学賞を受賞したとき、同級生たちは手のひらを返したように盛り上がるが、その裏には羨望や距離感もあった。
地元の人々は、貢に無料で講演や執筆を依頼しようと猛に頼るが、猛はそれをやんわりと断る。実は猛と貢は今でも連絡を取り合っており、猛は貢の新刊を欠かさず購入し、拙い感想を送り続けている。貢はそれに律儀に返事を返し、互いの生活をささやかに共有していた。
猛の妻・美咲は、貢から贈られる出産祝いに歓喜しつつ、貢の存在をどこか軽く扱っていた。猛と美咲は高校時代に再会し、何度か別れを繰り返した末に結婚。猛は美咲の努力や美しさに今も驚きながら、自身の体調の変化に悩んでいた。
Amazonから届いた荷物には、猛の注文した文芸誌のほか、美咲や娘のための美容品や服が含まれていた。猛は便利さに感謝しながらも、現代の家族のありようや、娘たちの成長ぶりに戸惑いを覚える。
その日、猛は貢が登場する雑誌を開き、若い女性作家との対談記事を読む。美しい新人作家の姿を見て、猛は「作家に美人はいない」と思い込んでいた自分の偏見に気づき、貢が開いた世界の広さと、遠くへ行ってしまった感覚をあらためて感じていた。
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