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松川貢(みつぐ)と田持猛(たけし)は、1974年に同じ産院で生まれ、昆別村という海辺の小さな集落で共に育った幼馴染だった。性格も家庭環境も正反対の二人だが、母親同士が仲良くなったことをきっかけに、自然と親しい関係が築かれた。猛は三人兄弟の末っ子で、兄たちに鍛えられながらも家族に深く愛され、体格が良く明るく人懐こい性格に育った。一方、貢は一人っ子で病弱、知性に恵まれながらも集落では「ガリ勉」とからかわれ、孤独を感じていた。唯一猛だけが、貢の知的な面を素直に称賛し、対等な友情を注いでくれた。貢にとって猛は「光」のような存在だった。しかしその猛が、ある晩、自宅に火を放とうとする。火がつかないマッチを何本も擦るうち、目的が炎を灯すことそのものに変わっていくという、彼特有の衝動性が垣間見える。その夜、貢が木下遙という人物と出会うきっかけとなったのは、まさにその火事の夜だった。


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