フィンランドに行く。

遠いはるか昔から夢見ていたこと。

あの水平線の先には何があるのだろう。

太陽は、月は、きっと私だけのものじゃない。

心はどこかで、誰かと繋がっている。

さぁ、探しに行こうか。

大切な何かが、待っている。


序章 「故郷、屋久島から関空へ」

重い荷物を手一杯に早朝8:15、私は屋久島空港にいた。
今日はフィンランド一人旅に向けて、離島である屋久島を
出発する日だ。
緊張からか、朝ごはんは食べられなかった。
滅多なことではナーバスにならない私だが、
フィンランドはやはり特別である。
まだ実感の湧かないぼやけた頭で、今日一日の色を
作り出す太陽に照らされた屋久島の山々を見つめ、
遂にここまできたのだと胸を張ってみる。
ただの夢でしかなかったフィンランド。
しかし、それに近づくために私は高校生活の青春を
アルバイトに捧げた。
こうもしてまでフィンランドに固執する理由は
なんだったのか、他人はもちろん、
自分でさえ実際のところ、理解に苦しむ。
勝手に作り上げた想像があまりにも美しすぎて、
それに陶酔していたのかもしれない。
けれどそういうものとは別の、
何か「運命的なもの」を感じていた。
いつごろからだったか、
「フィンランドに行けば何かが待っている」と、
何の根拠もなく信じ始めていた。
幻想の地フィンランド。大げさだが、
私の人生をかけた一人旅だ。
この旅がうまくいけば、私は今までの私の人生を誇りに思い、
これからの私の人生を信じ私を見送った後、
母が言った言葉だそうだ。

屋久島から鹿児島へ。鹿児島から関空へ。
それぞれ、スカイメートでチケットを取るため、
当日まで航空券を手にしていなかった。
親子そろって楽観主義なのか、
もし満席だったらの場合は特に考えず、
「どうにかなるでしょ」の精神を発揮していた。
幸運にも、それぞれの航空券をスムーズに手に
することが出来た。
一人旅の序章としては幸先がよかった。

みんながみんな、タンスをそのまま持ってきたかのような
大きなトランクを持っている関空に着き、
デザイン重視で買った私の小さなトランクは
あまりにも惨めだった。
国際線は4階にあり、地図の中でしか見たことの無い地名が、
掲示板にリアルに記されていた。
色々な人の夢を乗せた旅が、今日も始まる。

海外保険の手続きを済ませ、今日宿泊予定の
「関西エアポートワシントンホテル」の迎えの
バスをひたすら待った。
自分がどうしようもなく小さな女の子に思え、
バス停の壁にちょこんともたれかかり、
そのまま体育座りをしてみた。
今日から私一人。
ここで、自分の力が試される。
どこまでやれるか。

今回の旅は、「人間」というものの本質をあらためて問いただす
ことになるだろう。
関西も、フィンランドも、どこも私の知らない場所、
道の世界だ。
屋久島ではない。
それでもきっと、人の本質は一緒だ。
この旅が、人生の中で、青春の中で、キラキラと輝く
夜空の天の川になることを願い・・・・。

フィンランドに夢と希望と幻想を託す。                

 関西エアポートワシントンホテルにて前に進むことが出来る。
「美優がフィンランドに行くことは、運命だったんだね」。